やけどを負った女性のお話~やけどをセラピーで治す?~ 平 準司 ある時、私のもとに一本の電話がかかってきました。 そして、彼女の話をしばらく聞いていたのですが、これは私が癒すことができると思いました。そこで、 私が彼女に初めて会った時に、もう一度 彼女は3歳の時に、お母さんが間違って、事故で熱湯をかけてしまって、かなり幅広く、体の左側に上半身から下半身にかけて、ケロイド状にやけどの跡が残っていました。左足の親指と人差し指はくっついてしまっていました。そしてケロイド状のやけどを治したいというのが彼女の依頼でした。 私は 彼女は私の言っている意味がよく分からなかったようですが、『やけどが治るんだったらまぁいいか』という感じでセラピーを始めました。 そして彼女の無意識を見ていきました。3歳のやけどの部分からセラピーを始めたので、やけどのルーツについて聞きました。 3歳の時の記憶というのは、ハッキリしていませんが、実は私達は記憶をすべて覚えているんです。意識的には忘れていることはありますが、”潜在意識・無意識というのは、記憶の倉庫”になっているんです。そこで、そこの部分にアプローチをして、その時の感情を引っ張りあげてきました。そして彼女の痛みの部分を見ていきました。 彼女にとって、3才の女の子にとって欲しいものは親との親密感、それだけなんです。いつも両親から可愛がってもらいたい、それだけなんです。その女の子がやけどをしたんです。 皆さんが、もしお母さんの立場だったとしたら、自分の本当に可愛い3才の女の子に一生残るケロイド状のやけどをさせてしまったら、どう思いますか
? そして、お母さんは彼女を見るたびに自分を責め始めました。でも、3才の女の子が3才の頭で考えたらこんな感じなんです。 『やけどは熱かったけど、お母さんといつも遊んでもらいたい。でも、あのやけど以来、私とは全然遊んでくれない。いつも沈んでいる。"遊んでよ"って言っても、"後で"と言って全然遊んでくれない。どうしてなんだろう。このやけど以来。そうか、このやけどっていうのは、確かに私が見ても醜くて汚いやけどなんだけど、お母さんすら嫌う、遊んでくれないほどのやけどなんだな』 そう、3才の女の子は思ってしまったんです。これを”観念”といいます。大人の頭ではないんです。 3才の女の子の頭で考えたらこういう理屈になるんです。 これが彼女を支配する観念になっていて、憲法みたいになってました。私達にはたくさんの観念があります。この観念を持ったまま、『やけどを持った私はお母さんすら愛してくれないんだ』という観念を持ったまま、彼女は成長していきました。 でも彼女はすごい美人だったんです。中学校から高校にかけてラブレターを山ほどもらったそうです。そしてそのラブレターには 『あなたはとてもきれいですね、あなたみたいなきれいな人は見たことがありません。どうか僕とお付き合いして下さい』 と書いてあったそうです。そんなラブレターを見た時に彼女は 『きれいな私が好きなんでしょ、私がきれいだからということはこの人はきれいな物が好きなんでしょ。だったら私はだめよ、上手に隠しているけど、私には本当に醜いやけどがあるんだから。だったら、もしこのやけどが見つかったら、きれいなものが好きな人は私のことを愛してくれるはずがない。きっとがっかりして、嫌われてしまうわ』 彼女はそう思い、誰にもラブレターを返しませんでした。 少し想像していただきたいのですが、クラスで一人すごい美人の子がいて、ラブレターをたくさんもらっている。でも、その彼女は一通もお返事を出さない。誰とも付き合おうとしない。どう思いますか? 『何よ、美人だからといって、天狗になっているんじゃないの』 多くの人はこう思います。そして、彼女のクラスメートもそう思ったんです。 彼女が20歳になった時、自分の幸せや結婚について考えました。その時、彼女が取るべき道は一つだけでした。それは美容整形でやけどを治すということでした。 そして病院に行ったところ、皮膚移植をともなう美容整形を使わない限りやけどは治らないということでした。保険はききませんから800万~1200万お金がいるといわれました。 そして彼女は20歳の時から、朝・昼・晩と働いてお金を貯めたそうです。でも手術するには十分のお金が全然貯まらない。そして、1年たってクタクタになった時に私の所に電話をかけてきたんです。 その頃には彼女は『お母さんのせいで私は幸せになれない』と思い、お母さんをさんざん攻撃し、『私がこんな嫌な思いをするのもお母さんのせいよ』とさんざん責めてきました。 私は彼女をセラピーして、彼女の感情を扱ってこう言いました。 『あなたの心には二人のあなたがいますよね。一人は、あなたの左側には、やけどを負ったかわいそうな女の子がいます。そして右側には、やけどを負った女の子を本当に攻撃して、あなたを嫌っているあなたがいる。世界で一番誰よりも本当にあなたを嫌っているのはあなた自身ですよね。あなた以上にあなたのやけどを嫌っている人はいない』 『あなたの心の中で、お母さんを攻撃してるのは、左側のかわいそうなやけどを負った女の子か、それとも右側のあなたを嫌っている女の子のどっちなんだろうね。右側のあなたを嫌っている方ですよね。だったらあなたのお母さんはやけどの女の子と同じ部分と同じ痛みを持っているんではないですか?同じ苦しみを持ってるんじゃないですか?』 という話をしました。 これは潜在意識レベルの話ですが、彼女の潜在意識にアプローチをして彼女が気づき始めた時に、彼女は無意識の領域に入って行きました。そして、3才の頃の記憶がよみがえってきたんです。 その時の記憶はこうでした。実は、彼女はお母さんがお湯を持った瞬間におちゃらけて足にタックルしたんです。その瞬間にお湯がこぼれたんです。 真実はこうです。彼女はお母さんがとっても好きだったんです。そのお母さんが私がおちゃらけて、やけどをしてしまった。自分に責任があることで、お母さんが毎日毎日本当に元気がない。3才の彼女は だから彼女の恐れはこの投影で、男性を見た時に男性が落ち込むことがなによりの痛みでした。だから万が一、やけどが見つかって、彼がショックを受ける事に絶えられなかったんです。 でも、彼女がこの事に気づいた時、 そして私は彼女にこうたずねました。 彼女は 私達の中で、『デッド・ゾーン』という段階があります。そこでは、『それだけはいや、そんな事をするんだったら死んだ方がまし』という事をやってもらわなきゃいけない、そうしないと次に行けないという法則があります。彼女の場合はここが『デッド・ゾーン』でした。 『でも、やって下さい。このやり方があなたの人生を変えますよ』 そして、そのまま彼女は帰って1年間連絡がありませんでした。私も彼女がどうなってるのか忘れてる頃に一枚の葉書が来ました。それは皆さんも、もらわれた事があるかも知れませんが、ウェディングケーキを切っている場面の写真が載っている『結婚しました』という葉書だったんです。 私も初め彼女だとはわからなかったんですが、下に『近くにおこしの際は来てね』って書いてあったので、(本気にして行ったら嫌われるあれです ^^;)、電話をかけてみたんです。そしたら覚えていてくれてその後の話をしてくれました。 以下はその時彼女が電話で話したくれた事です。 彼女はセラピーが終わってから私の宿題をちゃんとしてくれたんです。 『誰にしようかな、誰に見せようかな』と思った時に、2年間彼女が『イヤ』としてても、近づいてくる男性がいたんです。そのボーイフレンドに見せたいと思って電話をしました。 そして彼女は 多くの男性は、もし皆さんの彼女からこんな電話がかかってきたらどう思いますか。最悪のモードに入って、最悪の事態に備えますよね。 『今まで女だと思っていたけど実は男だったのだろうか。そうじゃないな。ひょっとしたら背中一面に刺青なんかが入ってるんじゃないだろうか。いや、すごい秘密だと言ってたよな。なにかなぁー』 そして彼女がやけどを見せた時に、彼はこういう態度でした。 でも、もっとびっくりしたのは彼女の方でした。やけどを見て嫌わなかったのは彼が初めてだからです。見せたのも初めてでした。 『嫌わないの、こんなに醜いのよ』 彼女にとって、最大の恐れというのは真実ではなかったんです。そして彼に恋をしてしまって、1年後のウェデイングケーキになったんです。 そして彼女はこう言ってくれました。 『私、結婚式の時にね、裁判官になった気がしたのよ』 『花束贈呈の時、お母さんに花束を贈呈する時にお母さんの前に立った時に、私が3才の時以来お母さんは私が一生結婚できないんじゃないかとか、私が一生幸せになれないんじゃないかとか自分を責めてたんだという事に気づいたのよ』 『そしたら、今日私は裁判官だと思ったのよ』 『お母さん、あなたは無罪だよ、あなたの娘は幸せになったし、結婚もできたし、あなたが、ひょっとしたら私が一生幸せになれないんじゃないか、一生結婚できないんじゃないかって自分を責めてた、あの牢獄から今日出られるんだよ。あなたの恐れは真実ではなかったよ』 『何かお母さんを牢獄から出してあげるんだと思ったのよ。そしてお母さんに花束をあげて、二人でわんわん泣いちゃったの。』 『20分間も泣きつづけてたから、次の新郎新婦のスピーチが20分もできなかったのよ。でも、本当にみんなが拍手してくれて、いい結婚式だったと言ってくれました』 そこで私は 『私1年間、朝・昼・晩働いて400万貯めてたの。800万や1200万には全然足らなかったけど、ヨーロッパ一周の旅行もできたし、新婚旅行もできたし、結婚式もいい所で挙げたし、私はちょっとしたお金持ちだったわ』 『じゃ、あの4つは全部解決したんだね』 3才の時に、やけどの女の子は『お母さんすら愛してくれないぞ』と思いました。これは誤解でした。でも、彼女にとっては真実だったんです。そしてこれは彼女の恐れでした。そして今の話にも誤解が一杯あります。皆さんは体にやけどを持っていらっしゃらないかもしれません。でも私達は必ずこの部分を、”自己嫌悪”という形で持っています。 私達が、私達自身が一番嫌っている、憎んでいる自分自身の一部分を許し、受け入れる事ができれば、人生を変える事ができるんですよ。 |
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